植物方言

植物は人が生活するうえで密接な関係があり、長い歴史の中でその名前は付けられてきました。時にその植物の名前は遊びや習慣の中から、また時には四季の移り変わりに関係し、また薬用や道具として用いられた事からも呼ばれる事となったため、その植物の名前から長い網地島の歴史の一部をかいま見る事にもなるでしょう。


ア行 カ行 サ行 タ行 ナ行 ハ行 マ行 ヤ行以降

方言名 和名 科名 名前由来の説
         
アオキ マサキ にしきぎ科
アカユリ スカシユリ ゆり科 白い山百合を単に「ゆり」と呼び、それに対して赤い百合なので赤百合と呼んだ
アゲズグサ イネビエ ひゆ科 赤トンボをアゲズと呼ぶので、茎が赤いところからそう呼んだのでは
アゲズグサ スベルヒユ すべりひゆ科
アザミ ノアザミ きく科
イッポンソウ アキカラマツ きんぽうげ科 土手や野原に生えている様子から
イドフジ/フジ クズ まめ科 フジの花と似た花が咲くのと、長いツタを糸に見立てた。昔は実際に薪を縛るのにも用いた
イワギク ハマギク きく科 岩場に咲くことから
イワダケ セキコク らん科 岩に生える竹の意味
イワブキ ダイモンジソウ ゆきのした科 岩場に成育し葉がフキに似ていることから
インクの実 ヒサカキの実 つばき科 熟した実を潰すと青いインクのような汁が出る事から
ウバツコ スイカズラ すいかずら科 スイカズラは花に蜜があり、昔の子供たちはこれを吸ったが、この蜜を母の乳になぞらえて。「ツコ」は乳の事。
ウマノシラミ ヤブジラミ せり科 熟した実が体などに付着するのをシラミにたとえたが、その実が大きいので馬に付くほどのシラミと形容
ウマノスカンポ ギシギシ たで科 形が似ているスイバをスカンポと呼ぶので、大きくて食べられないとの事で
ウマノセンベイ オニヤブマオ いらくさ科 葉が煎餅の形をしており、大きいので馬が食べるほどと表現した
エエツコ チガヤ いね科 昔、子供たちは若い芽花を噛んで甘い汁をすったらしいが、その味が良い汁なので、良いツコ(ツコは乳の意)と呼んだ
オシャカノハナ アズマギク きく科 お釈迦様を祭るお堂の屋根をアズマギクの花の部分で葺いたため
オトコマツ クロマツ まつ科 幹が赤い赤松を「オンナマツ」と呼び、それに対して幹が黒い黒松を「オトコマツ」と称した
オナゴダケ ヤダケ いね科 細くて柔らかい感じを女性に見立てた
オニツツジ レンゲツツジ つつじ科 ヤマツツジより葉や花が大きく荒い感じがするので
オビリクサ ハマニンニク いね科
オンナマツ アカマツ まつ科 幹が赤い色をしているところから
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カツラ ハリギリ うこぎ科
ガマ コガマ がま科
カラスブドウ
ウマブドウ
ノブドウ ぶどう科 烏や馬しか食べないだろうとの意味から
カラツウリ カラスウリ うり科
カランカラン ナズナ あぶらな科 子供たちは、茎から果実を少しはがしたのを降り、カラカラと音をさせて遊んだ事から「カランカラン」や「ピンピンクサ」と呼んだ
カワラウツギ ドクウツギ どくうつぎ科
ガンゴ ガガイモ ががいも科
カンショウ ニッコウキスゲ ゆり科 萱草の事では。中国にこの花を見て憂いを忘れるとの故事が有り、忘れるを萱にあてた。
ギャロッパ オオバコ おおばこ科
キンジソウ/イドクサ ユキノシタ ゆきのした科 井戸のまわりで見かける草との意味
キンポバナ ヒルガオ ひるがお科 耳が聞こえないのを「きんぽ」と言うがそれとの因果関係は?
コウカン サルナシ さるなし科
コマゴヤシ ノゲシ きく科
コモチウツギ ニワトコ すいかずら科 1本の茎に花や実が沢山付く様子から「子持千空木」と称した
コンペットバナ ミゾソバ たで科 花の様子を砂糖菓子の金平糖に見立てた
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サカキ ヒサカキ つばき科 神道の神事に使用するが、ヒサカキは姫神の意味
ジゴクバナ ヒガンバナ ひがんばな科 墓地で多く見かける事や、毒を持ち外見も毒々しいことから
シュロコ ノビル ゆり科
シロキジンソウ ハルユキノシタ ゆきのした科 ”シロ”はユキノシタと違う葉の様子から、”キジンソウ”は漢名虎耳草から
スカンポ スイバ たで科 スイバは生や塩付けとしても食べられ、酸っぱい葉の意味でその名がつけられたが、それと同様の意味
スギクサ スギナ とくさ科 杉の葉に似ていることから
スギビ シキミ もくれん科
センソウ サンショウ みかん科
ソゾメ ガマズミ すいかずら科
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タゲガラスカンポ イタドリ たで科 茎が竹の節のようになっていること。スカンポは「スイバ」のこと
タタミクサ オオバジャノヒゲ
ジャノヒゲ
ゆり科 子供がままごとで畳を編んで遊んでいた
タラッポ タラノキ うこぎ科
チャゴミ アキグミ ぐみ科 茶の花の付き方に似ていることから
チャゴミ ナツグミ ぐみ科 アキグミ同様茶の花の付き方に似るため
チョウチンバナ ホタルブコロ ききょう科 花を堤燈に見立てた
ツキミソウ オオマツヨイグサ あかばな科 ツキミソウに似ていることから
ツタウルシ キズタ うこぎ科 ウルシにかぶれる事を「うるし負け」と言い、キズタにかぶれた事からツタのウルシの意味で
ツツジ ヤマツツジ つつじ科
ツバメ/スズ カラスムギ いね科 穂の形がツバメが飛んでいる姿に似ている。穂が風に揺れる様子を風鈴になぞらえて
デデッポッポ アオキ みずき科 山鳩の鳴く時期にアオキの花が咲く事から
トウゴボウ ヤマゴボウ やまごぼう科 唐から伝わったゴボウ
トウヤク センブリ りんどう科 当薬で薬になるとの意味で
トトキ ツリガネニンジン ききょう科
トビラ トベラ とべら科 節分のときこれを扉にはさみ鬼をよける風習があった事から、「トベラ」と呼ばれるようになったが「トビラ」はそれが訛ったものと思われる
トリコトマラズ メギ めぎ科 枝が多く刺があるので小鳥も止まらない
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ネコアシ ゲンノショウコウ ふうろそう科 葉の形が猫の足跡に似ていることから
ネコダマ オオバジャノヒゲの実 ゆり科 実がネコの目のように光って見えることから
ノガゲバラ サルトリイバラ ゆり科 5月5日の節句に赤飯や煮しめを持って野原に出掛ける事を「ノガゲ」と言い、丁度その時期に咲く刺のある木なので。現在「ノガゲ」の風習はない
ノリズグサ イグサ科 海苔を漉く草ゆえ
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ハコベ カタバミ かたばみ科 本物のハコベはペンペン草やピーピー草と呼ぶので取り違えて伝えられている
ハゼ オニツルウメモドキ にしきぎ科
ハックリ サイハイラン らん科 白い栗の意味、昔は鱗形の部分を生で食用とした
ハママメ ハマエンドウ まめ科 浜に生える豆
バラ テリハノイバラ ばら科 薔薇以外のテリハノイバラもバラと呼んでいる
バラノキ ニセアカシア まめ科 薔薇の様に刺があることから
ピーピーグサ ハコベ なでしこ科 ハコベは鶏の雛に餌として与えたが、この雛の鳴き声の「ピーピー」から来たのでは
ヘビノツコ ミミガタテンナンショウ さといも科
ヘビノツコ
ヤマスズラ
アマドコロ ゆり科 ヘビノツコは茎が地中を蛇のように長く這い、乳首が並んでいるように花が咲く事から。ヤマスヅラはスグランの花の付き方に似ていることから
ヘビノマクラ
ヘビノハカマ
ウラシマソウ さといも科 偽茎面が蛇のまだらの模様に似ていることと枕は実の様子、袴は花の形。ウラシマソウは浦島太郎が釣り糸を垂れているのにその姿を見立てたが、蛇が鎌首を立て舌を出している姿に見立てたのかも知れない
ホウズギッパ オオバギボウシ ゆり科 葉がホオズキに似ていることから
ホタルクサ キジカクシ ゆり科 葉の間から見える小さな実を蛍がとまって光を出していると見立てた
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メダマノキ エノキ にれ科 お正月に作る「繭玉」の木に使用することから
モズクサ ヨモギ きく科 草餅に入れるため
モチノキ
モズヌギ
タブノキ くすのき科 もちのき科のモチノキと葉が似ているので
モロ イブキ ひのき科
モンジャノキ オオバクロモジ くすのき科 樹皮上の黒い斑点を文字になぞらえた、文字の木という意味
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ヤマガ アズキナシ ばら科
ヤマグミ ヤマウグイスカズラ すいかずら科 果実がグミに似ていることから
ヤマナデシコ カワラナデシコ なでしこ科 カワラナデシコは川原に生えるナデシコとの意味だが、島には川がないのとハマナデシコと区別して呼んだ
ヤマハギ マルバハギ まめ科
ヤマブドウ エビズル ぶどう科
ヤマリンゴ ズミ ばら科 果実が林檎に似ていることから
ユリ ヤマユリ ゆり科
ワスネナグサ ナツズイセン ひがんばな科

この植物方言は昭和45年から47年までの間、当時中学校教諭として教鞭をとっていた高橋和吉氏が調査した内容をまとめた「網地島植物誌」からのものです。同氏は常に長靴を履き野山を歩いていたので「長靴先生」の愛称で呼ばれていました。

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